AML with t(6;9)(p23;q34.1);DEK-NUP214(DEK-CAN)

[概要]

AML with t(6;9)(p23;q34);DEK-NUP214(DEK-CAN)は骨髄系ないしは骨髄単球系への分化を示す白血病で、FAB分類ではM2またはM4の病型をとることが多い。MPO染色は陽性、非特異的エステラーゼ染色は陽性または陰性を示す。約半数の症例に骨髄または末梢血中に暗い色調の顆粒をもつ好酸球の増加を認める。末梢血ないしは骨髄中の好塩基球増加(>2%)もこの病型に特徴的とされる。また、多系統の異形成もしばしば認められる。環状赤芽球の増加がみられる症例もある。

遺伝子プロファイルではFLT3-ITD変異が高頻度に認められる点がこの病型の特徴である。

[症例]

7歳、男児。38度台の発熱が3日前から持続したため前医を受診し、血液検査で白血球増加を指摘され、紹介受診。 既往歴、家族歴に特記すべきことなし。身体所見では、体温39.1度、胸腹部、四肢に点状出血斑が散在。右頸部に2cm大のリンパ節腫脹あり。

[末梢血検査所見]

WBC65000/μL
 Blast85%
 Seg2%
 Lympho6%
 Mono12%
RBC274万/μL
Hb7.8g/dL
Ht22.3%
MCV81.3fL
PLT7.0万/μL
Ret0.1%

[骨髄形態診断]

骨髄は正形成、顆粒球系優位で、巨核球系は減少している。骨髄芽球を15.7%、単芽球を12.5%、前単球を5.3%を認め、芽球相当細胞の合計は33.5%である。単球を10.5%認める。

骨髄芽球は中型でN/C比大、細胞質は好塩基性、核網繊細で核小体は不明瞭。単芽球は大型でN/C比小、細胞質は灰青色で一部は空胞を有し、核網繊細で大型の核小体を認める。

骨髄芽球はMPO染色陽性、特異的エステラーゼ染色陽性、非特異的エステラーゼ染色陰性である。単芽球はMPO染色弱陽性、特異的エステラーゼ染色陰性、非特異的エステラーゼ染色陽性でNaFで阻害される。

顆粒球系細胞には分化傾向が認められ、10%〜50%未満に低〜無顆粒好中球、偽ペルゲル核異常の異形成を認める。赤芽球系、巨核球系には明らかな異形成を認めない。

好酸球を2.9%認め、その多くに暗赤色の細胞質内顆粒を認める。好塩基球は0.6%と増加を認めない。

骨髄中の芽球が20%以上かつ骨髄系細胞、単球系細胞ともnon erythroid cellsの20%以上を占める。また、末梢血では単球増加(≧5000/μL)を認める。以上から、acute myelomonocytic leukemia(FAB分類M4)が示唆される。

骨髄芽球(黄矢印)は中型でN/C比は大、細胞質は好塩基性で核網繊細で核小体は目立たない。単芽球(緑矢印)は大型でN/C比小、核網繊細で大型の核小体を認め、細胞質は灰青色で空胞を有すものもある。

  1. 1単球
  2. 2巨大好中球(偽ペルゲル核異常・顆粒減少)
  3. 3リンパ球
  4. 4正染性赤芽球(脱核前)
  5. 5芽球

暗い顆粒を有する好酸球が認められる。

MPO染色(左)は骨髄芽球は陽性、単芽球は弱陽性。エステラーゼ染色は骨髄芽球は非特異的陰性、特異的陽性、単芽球は非特異的陽性(NaF阻害あり)、特異的弱陽性で、二重染色陽性細胞もみられる。

[骨髄血細胞表面マーカー]

マーカー陽性率(%)
MPO48
CD11765
CD1381
CD1533
CD3399
CD6441
CD6521
HLA-DR41
CD774

[染色体・遺伝子検査]

[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
46,XY,t(6;9)(p23;q34.1)[20]

[キメラ遺伝子解析]
DEK-NUP214(DEK-CAN) 319200 コピー/μg RNA

FLT3-ITD]
陽性

[解説]

芽球の骨髄単球系への分化、暗赤色の顆粒を有する好酸球、顆粒球系の異形成などから、AML with t(6;9)(p23;q34.1);DEK-NUP214(DEK-CAN)の可能性が考えられ、染色体検査、キメラ遺伝子の結果から確定診断された。この病型の44%~62%にみられるとされる好塩基球増加(>2%)はこの症例では見られなかった。

細胞表面マーカーはこの病型に特徴的なパターンはないが、MPO、CD13、CD33、HLA-DR、CD117、CD15などが陽性で、また一部の症例では本症例のようにCD64などの単球系マーカーも陽性を示す。

また、この病型で高頻度に検出されるFLT3-ITD変異が本症例でも認められている。

なお、WHO分類2017年版では芽球が20%に満たない場合でもAMLと診断できるのはAML with t(8;21)(q22;q22) ;RUNX1(AML1)-RUNX1T1(ETO)、AML with inv(16)(p13.1q22) or t(16;16)(p13.1;q22);CBFB-MYH11、Acute promyelocytic leukemia with PML-RARAの3つの病型のみであるが、AML with t(6;9)(p23;q34.1);DEK-NUP214(DEK-CAN)の病型でも20%未満の症例が少なくなく、この場合もAMLとして治療すべきとする意見もある。

参考文献

  • Oyarzo MP, Lin P, Glassman A, et al.Acute myeloid leukemia with t(6;9)(p23;q34) is associated with dysplasia and a high frequency of flt3 gene mutations.Am J Clin Pathol. 122:348-58. 2004
  • Sandahl JD,Coenen EA,Forestier E,et al.t(6;9)(p22;q34)/DEK-NUP214-rearranged pediatric myeloid leukemia:an international study of 62 patients.99:865-72.Haematologica.2014

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